晴耕雨読日記(仮)

以前、はてなダイアリーで書いていた「晴耕雨読」の引っ越し先です。今の生活は全くもって「晴耕雨読」ではないので、タイトルは現在思案中。

いわゆる「女性は子どもを産む機械」発言のこと。

最近、世間をいろいろ騒がせている、柳沢厚生労働大臣の発言。


火曜日の「とくダネ!」で室井佑月が「別にこの人がそういうこというのはどうでもいいっていうか、まあ世代が違うからそういう世代なんだなあって感じなんだけど、それより問題は少子高齢化が女のせいってことになってることなんじゃないの?」というような発言をしていて、そうなんだよなー、って思うのだ。


柳沢氏が個人攻撃にあっている感じだけど、「女性は子どもを産む機械、装置」という言葉ばかりが一人歩きしていて、実際にはその講演会でどういう話をしたのか、さっぱりわからない。
柳沢氏個人は家族が女性ばかりで、どちらかといえば女性を尊重していると言われていたと言うことだけども、政治家ってその場その場で都合のいい話をする人たちだから、そこで言ったことが100%その人の意見かどうかはわからないと思う。ただ、厚生労働大臣という立場にありながらそういう発言が出たということは、政府や閣僚はそう思っているということなんだろうな、と。普段の閣議とかいろいろな会合の場では「やはりここは女性に頑張ってもらうしかありませんなあ」とか言ってんじゃないの?と思われても仕方ないと思う。


少子高齢化は、女性の問題なのか?女性が産みたがらないのが悪いのか?
女性が頑張って産めば解決するのか?
なんで女の人だけが頑張るのだ?


私には子どもはいないけど、職場には働くママが多くいる。そしてみんな大変な思いをしているのだ。


子どもの時、私は「結婚して一年くらいすると“自動的に”(笑)子どもが生まれる」と思っていた。だって近所には子どもがたくさんいたから。隣の家もその隣の家も、またその隣の家も。同い年の友達、一つ上、二つ上、一つ下、二つ下……いろいろな年代の子どもたちがいた。小学生も中学生も高校生も。よそのおじさんやおばさんにも叱られたし、母親が仕事に出ている日曜日は私たち姉妹を預かってくれる近所のおばさんたちもいた。小さい頃に父を亡くして、母が働いていたわが家で、私たちが普通に育ったのは地域のおかげだと思う。おじさんやおばさんが子どもたち丸ごと育ててくれたような。


古き良き時代だった、と思う。今では絶対に望めないだろう。


今、東京で共働きの夫婦だけで子どもを育てるということは、本当に大変なことだ。少なくともうちの会社ではそうだ。産休/育休を取って復帰する女性が多い会社だけど、それでも大変だと思う。私は「うちは子育て支援です」と言い切っているけど、そもそも子どもがいる女性は働かないと思っている男性もまだいるのだ。悲しいけど。「あの人は、残業少ないよね」とか言うのを聞くと、「そりゃあんたの家は奥さん家にいるから何とも思わないだろうけどさー」って思う(時々言ったりもする・笑)。
子どもがいても残業する女性もたくさんいるが、その場合ほぼ100%の確率で親が子どもの世話をしてくれる家だ、しかも自分の親が。女性の両親と同居しているとか、すぐ近所に住んでいるとかで保育園のお迎えをしてくれて食事もお風呂も全部やってくれる、という場合。
夫婦だけで子どもを育てるからといって、では負担を夫と妻で分けられるかというと、それも実際には難しい場合が多い。少なくとも、「子どもが熱を出したから」といって早退する男性は、私の周囲にはいない。


育児休暇あけ、会社に戻るのは大変だ。保育園だって空きは少ない。というか、0歳児、1歳児で預かってくれるところを探すのは本当に大変なことだ。空いていても遅くまで預かってはくれない。
保育園に行くようになると子どもはしょっちゅう熱を出す。それは免疫を身につけていく過程で、人として成長していく上で必ず通る道だけど、熱を出せば迎えに行かなければならない。頻繁に熱を出すと早退やお休みも増え、周囲に気も遣うようになる。
うちは仕事の内容から勤務はシフト制なのだが、独身の女の子が「しょうがないと思いますけど……」と言いながら、暗にシフトに入らないママを批判するような言動をするのをなだめながら、なぜ今はみんなでバックアップしていかなければならないかを説き、本人の耳に入らないことを願う。


法律では育児休暇から職場復帰する際に、休暇前の役職から降格してはいけない、基本的には同じ仕事を、となっているが実際の会社でそれは難しい。降格はないにしても、まったく同じ仕事を1年間、その人のために開けたままにしておくわけにもいかない。かといって他の誰かにやらせて、1年後「はい交代」というのも難しいだろう。
私はまだ完全に出産をあきらめたわけではないけれども、現実問題として今妊娠したらものすごく悩むと思う。今、私がやっている仕事(というかポジション)は、部長が兼任でやるには些末な業務が多すぎる。ということは、私が出産休暇・育児休暇に入るということになれば、誰かに引き継ぐだろう。そうやって回り始めた職場に1年後、「はーい、戻ってきましたー。じゃ、交代」と簡単に戻ってくることなどできないだろうと思うから。
働く女性が子どもを産もうとするのは、本当に大変な、難しいプロジェクトなのだ。
だから、今回の発言では実際に子育てしている女性は本当に怒っていると思う。ふざけんな、環境整えて言え、って感じでは。


確かに産むという行為は男性には不可能だ。だから、産む能力を持っている女性に産んでもらいたい、という発想になるのだろう。
でも、すべての女性が子どもを産むわけではない。産みたくても妊娠が難しい女性だっているだろうし、妊娠が可能でも産めない人もいると思う。経済的な問題だったり、時期的な問題だったり。


政治家は、高いところからものを考えがちだから、ひとくくりに「女性」としてしまっているのだろうけど、それはちょっと配慮に欠けるだろう。男性にいろいろあるように、女性にもいろいろいる。当たり前のことだ。
本当に少子高齢化を何とかしたいと思っているのなら、おっさんばかりで話していないで、今、子育てしているお母さんたちの意見をもっと尊重してみてはいかがでしょう。


もう一つ。
私は柳沢氏が厚生労働大臣を辞めなくてもいいと思っている。それは問題が大したことがないと思っているからではなく、本質に取り組むにはいい機会だと思うから。
今彼はひたすら「反省しています」とか言い続けているけど、反省するのは当たり前のことで、次のステップに進んでいただきたい。今回こういう失言をしたことでいろいろと批判をされて、その中で少子化問題の本質がわかっていなかったことがわかった、だから今後は子育て支援社会を本気で構築するためにこういう風に取り組んでいきたい、とか。そんで、本人だけじゃなくて、安倍内閣が全員取り組めばいい。それなら今回のこの騒ぎも意味はある。


なんだか今、柳沢氏ひとりの問題になっていて、辞任するかしないかばかりが取りざたされているけれども、じゃ、柳沢氏が辞任すればそれでいいのだろうか?実際には何も変わらないのでは?
こういうときに野党はもっとつっこむべきだろうと思うけど、鬼の首でも取ったみたいに辞任要求してるし、なんだかなー、と思う。社民党もせっかく女性党首なのに、ぜんぜん生かせてないし。


騒ぐだけ騒いで、結局何も変わりませんでした。になる公算が大きい方がよっぽど問題だと思うけどなあ。