晴耕雨読日記(仮)

以前、はてなダイアリーで書いていた「晴耕雨読」の引っ越し先です。今の生活は全くもって「晴耕雨読」ではないので、タイトルは現在思案中。

東京マハロ「かみさまの匂い」@駅前劇場

女優陣に惹かれて観劇。岡田さつき、武藤晃子、勝平ともこ。キャラメルボックスTEAM 発砲・B・ZIN もM.O.Pも好きな劇団だ(しかし、後ろの二つはもう解散している……なんでだーっ)。

金曜に本谷有希子、土曜に「奥様お尻をどうぞ」と針が激しく振り切ってるような芝居を観た後だったので「あー、普通の芝居だー」とまず思ったのだが、なんとなく違和感が。よかったねー、と素直に言えない感じが。


これも「いいお話」では全然ない。おそらく郊外の古本屋の旦那は売れない漫画家でもあり、目の見えない父親と妻と3人で暮らしている。結婚して独立した妹と弟がいて、妹は売れっ子官能小説家、弟は設計士。それぞれ活躍している彼らと自分を比べて若干卑屈になったりする彼をもり立てる妻は医療事務の仕事で生計を支えている。彼らには過去、子供を流産か死産で失っている過去があるらしい。いろいろな意味で行き詰っている雰囲気が漂っているが、穏やかな暮らしではある。そこに嵐をもたらしたのは弟の妻だった……。


古本屋の嫁は岡田さつき、官能小説家の妹が武藤晃子、弟の妻が勝平ともこ。女優陣はとにかくむっちゃよかった。明るくてさばさばして、隙あらば落ち込んでしまう夫を盛り立てて、でもどこかに負い目がある奥さんの岡田さつきもよかったし、控えめに見えて実はものすごく気が強く、世界は自分を中心に回っていると思っている弟の嫁の勝平ともこもよかった。


よかったのに、なんでこんなにひっかかるのかなーというのは、たぶん理由は二つある。


一つは、「子供を生まないとやっぱり肩身が狭いらしいよ」という台詞に代表される価値観を、たぶん私自身があまり好まないこと。いや、そういう意識が今の時代も根強く残っていることはわかっています。私自身も子供がいない嫁なので、そういう気持ちを味わったことがないとは言わない。が、どうなんだろうなあ、そこは。


もう一つは、「ボランティアについて」なんだと思う。ボランティアって言うか、震災ですね。
主人公は周囲に呼びかけて読まなくなった本をおくってもらって、それを被災地に届けるというボランティアにはまって、それもこの芝居を左右する一つの要素なのだけれども。


ここ数ヶ月、芝居を見に行くと震災がストーリーに出てくることが多い気がする。直接じゃなくても影響を及ぼしていたりするんだけど、正直、それはもうやめません?と思う。
震災のことを忘れたいというのではないので、念のため。被災地をどう支えていくかについてはずっと考えていかなければならない命題だと思うが、震災とかボランティアを芝居の筋立てや道具立てに使うのはどうかな、と思っているのだ。


このたびの震災は千年に一度と言われるくらいの超弩級の災害だから、多くの演劇人が気持ちを揺さぶられたのはわかる。この精神状態を、人々の様子を脚本に書きたいとも思うだろう。なんだけど、なんというか……。
ボランティアにはまって、本業がおろそかになってるんじゃないの?という人が身近にいる、という人はいるんだろうし、そういう人が身近にいれば「あー、こういう人いる」って共感もするだろうし、いなくても容易に想像がつく。ので、わかるんだけど、うーんうまく言えないけど、もういいんじゃないの?っていう気がしてるだけ。それでなんとなくひっかかっちゃいました。


でも、お芝居自体はよかったです。役者さんもみんな。


あ、あとあと、わが家で「Studio Lifeの人」と言われている曽世さん。いい加減ちゃんと名前を覚えることにした。曽世さん。これまで何回か観ているけど、たたずまいが好きな役者さんだ。Studio Lifeの役者さんって意外といろんなところに出ていていろいろ観ているのに、十把一絡げに「Studio Lifeの人」って言っちゃうんだよねー。反省する。最近だと玉造小劇店の「お代り」で観ていた(G2プロデュースの「止まれない12人」とか「痛くなるまで目に入れろ」とかも観てるはずだが覚えていない……)、
曽世さん、史上稀に見るだめんずでしたけど、よかったですそのだめんずっぷりが。