晴耕雨読日記(仮)

以前、はてなダイアリーで書いていた「晴耕雨読」の引っ越し先です。今の生活は全くもって「晴耕雨読」ではないので、タイトルは現在思案中。

シス・カンパニー「叔母との旅」@青山円形劇場

男優4人がくるくると役を入れ替えながら演じる、「叔母との旅」。再演。初演は2010年、同じ青山円形劇場で、出演者も演出家も同じ。
4人で20数人の登場人物をくるくると演じ分けていく芝居で、巧みなフォーメーションに見ているほうも組み込まれていく感じ。物語が進むにつれて、ドーパミンが放出されてくる。
とはいえ、基本の役は割り振られていて、
主人公のヘンリーは、感情によって浅野和之鈴木浩介が、
オーガスタ叔母さんは段田安則が、
オーガスタ叔母さんの召使というか年下の彼氏のワーズワース高橋克実が、
基本的には演じる。

オーガスタ叔母さんというのは、主人公ヘンリー(独身の50男。銀行を退職していて、庭のダリアの手入れが生きがい、という枯れた男)の母の妹で、物語はヘンリーの母の葬儀の後から始まる。
久しぶりに会ったこのオーガスタ叔母さんというのはぶっ飛んだ人で、ヘンリーの母は質素で堅実な人だったらしいが、オーガスタ叔母さんは70を超えているのに色も欲もまったく衰えていない、パワーが服を着て歩いているような人。この叔母さんに枯れた50男が全編通して振り回される話だ。

段田安則の、70代おばあさん演技がすばらしい。オーガスタ叔母さんは、わかりやすい「愛される老嬢」ではなく、山っ気があり、冒険心が旺盛で、ひとところに落ち着いて暮らそうなどという頭はなく、70を超えてまだ色気の枯れていない、他人事で見る分にはいいけど自分の叔母さんだったらメンドクサイ人だなと思わせる人なのだけど、この愛すべき、しかしメンドクサイおばあさんを段田安則が魅力的に演じているのがよい。オーガスタ叔母さんの魅力で引っ張る2時間。

円形劇場、という舞台の形を最大限に生かしたフォーメーションが素敵。
松村武って、いい仕事するよなー……。