晴耕雨読日記(仮)

以前、はてなダイアリーで書いていた「晴耕雨読」の引っ越し先です。今の生活は全くもって「晴耕雨読」ではないので、タイトルは現在思案中。

中国映画祭@草月ホール

青山の草月ホールで開催中の中国映画祭で、「静かなるマニ石」「二人のバレエ」の2本を観た。


■「静かなるマニ石(静静的嘛呢石)」(2005年、中国)
万玛才旦というチベット人監督の作品。

チベットの辺鄙な寺で修行する少年ラマ僧が年越しのために実家に帰ることになった。家には商売を始めた兄が新しく買ったビデオデッキがあり、少年は「西遊記」に夢中になる。僧侶の生活と世俗の生活、土着文化と外来文化、伝説と現実との間で戸惑いを感じる少年。神秘的に描かれがちな土地だが、実際には文明の風が吹いている。そんな静かな変化をチベット族の監督がドキュメントタッチで描く。香港国際映画祭など数々の映画祭で賞賛されている話題作。

映画の舞台は、青海省黄南蔵族自治州。ストーリー自体は派手な事件もなく淡々と進んでいくのですが、なかばドキュメンタリーのようで(実際出演者はすべて素人だそう)、チベット人の生活がかいま見えて興味深かった。
集落全体がひとつの寺になっているようなラマ寺で修行中の少年。少年の村ではラマ僧になったのは何人かいたけど皆還俗してしまい、いまでも修行を続けているのは彼一人。貧しい家の子だったのかなあ、と思っていたのだけど、実はものすごくいいとこのぼっちゃんだった。父親は村で会計士をしていて、住んでいる家もすごく立派。だから彼がラマ僧になったのは別に口減らしではないわけで、おじいさんが「孫が僧侶になったから思い残すことはない」みたいなことも言っていたし、チベット人にとって家族から僧侶が出るということはもんのすごく幸せなことなんだろうなあ。
しかし本人は娯楽に飢えているようで、西遊記のVCDに夢中になり、父親に「一晩だけ寺に持って行かせて。師匠に三蔵法師の物語を見せたい」とかいう。師匠思いのようでいて、絶対に自分が観たいに違いないのだが(笑)。
劇中、「小活仏」という、さらに小さい少年が出てくるのだが、これは本物の活仏なのだそうだ。ダライ・ラマパンチェン・ラマのような、「化身ラマ」というやつですね。生まれ変わって7年、と言っていた。でも、そういう徳の高いラマであるはずの彼は、DVD好きなのであった(笑)。
宗教(チベット仏教)が生活に完全にとけ込んでいる様子が、大変興味深かったです。
終映後に挨拶をされた監督も、「映画大好きな純朴な青年」って感じの人でした。


http://ent.sina.com.cn/m/c/f/jjdmns/index.html


■「二人のバレエ(兩个人的芭蕾)」
監督、脚本、出演者がすべて女性、という映画。言われてみれば、確かに男性はスクリーンにほとんど映らなかった。群衆シーンくらいですね。

辺鄙な地方の小さな村。夫に先立たれ、近所の人々に不吉だと忌み嫌われながらも、養女を憧れのバレリーナにすべく、懸命に生きる女性を描いた力作。撮影は世界文化遺産にも登録されている安徽省の古集落で行われ、中国南方独特の建築も楽しめる。主演の倪萍(ニーピン)は女優から転向した中国国営テレビの超人気司会者だが、映画界の熱いラブコールを受けて『張美麗先生の脚』(02)で映画界に復帰し、迫真の演技で観客を魅了し続けている。

……という倪萍さん。どっかで観たことあるなあ、と調べてみたら、昨年の秋の東京国際映画祭で観た「ドジョウも魚である(泥鰍也是魚)」の主演女優でした。あの作品ではどちらかというと口の重い役でしたが、今回は台詞も多く口数の多い役。でも、女だてらにこどもを抱えて無理矢理にでもたくましく生きていく、と言う役柄は同じ。
しっかし、女優魂だよなあ、と思うのは、テレビ司会者としての倪萍さんはこんなに綺麗な女性なのに、いざ映画となると肝っ玉母さんみたいになるところ。
http://chinastar.muzi.com/chinastar/cc/fanti/15991,3.shtml?pfg=1000997


映画は、うーん、えっと、世界遺産であるところの山西省の町並みは美しかったです(おい)。
要所要所で趙季平っぽい感動音楽が流れるのは若干閉口しました。なんで中国映画って「美しい風景、美しい音楽」みたいな映画音楽を使いたがるんだろう……。