晴耕雨読日記(仮)

以前、はてなダイアリーで書いていた「晴耕雨読」の引っ越し先です。今の生活は全くもって「晴耕雨読」ではないので、タイトルは現在思案中。

「三峡好人」@東京フィルメックス

本日から開催される東京フィルメックス。もう第7回になりましたかー。
簡単なオープニングセレモニーの後(今年も司会はJ-WAVEの福之上達也さん)、オープニングフィルムはこれまたフィルメックス常連の賈樟柯ジャ・ジャンクー)「三峡好人」。


三峡ダム建設により立ち退きの続く、奉節という町に、16年前に別れた妻を捜すために山西省からやってきた男と、2年間音信不通の夫を捜しにこれまた山西省からやってきた女の話。
この奉節という町は、以前山形国際ドキュメンタリー映画祭で上映された「水没の前に(淹没)」という作品の舞台でもあり、昨年のYIDFFでこれを観ていた私には、行ったこともないのになんだかなじみのある町のように感じられました。
フィルムではなくデジタル撮影だということもあって、なんだかドキュメンタリーチックな作品。賈樟柯はこの作品とは別に「東」という三峡ダムのドキュメンタリーを撮っているそうなのですが、この映画自体もなんだかドキュメンタリーのような感じでした。といいつつも、途中妙なもの(笑)が挿入されているので絶対ドキュメンタリーではないんですが。


これは好き嫌いの問題かもしれませんが、デジタル撮影だと「映画」とはちょっと違うモノになってしまうような気がします。使いようだとは思うんだけど。例えば、TIFFで観た「私たちがまた恋に落ちる前に」はデジタルでしたが徹底してモノクロだったせいかあまり違和感なく観られました。が、「三峡好人」だと監督曰くポストプロダクションで青や緑を強調した色彩にした、とか言っていましたが、なんか「見えすぎ」という印象があるのです。あれもこれもはっきりした輪郭と光量で見せてしまっているというか。上手く言えないのだけど。


ただそういうこととは別に、台詞は多くないけれども登場人物たちは大変魅力的でした。特に山西男と、袋詰めになっていたのを救ってあげた若い男との友情(?)。周潤發を愛し、携帯の着メロは「上海灘」だった彼の結末は、山西男の台詞を借りるならまさに「渡世だな」であり、切なかったけどああいうのってたぶん珍しくないことではないんだろな、とも思う。


※フィルメックスのホームページにあるデイリーニュースのページで、18日に行われたトークイベントの模様が掲載されています。賈樟柯が映画監督になったいきさつなどは初めて読んだので、大変興味深かった。