晴耕雨読日記(仮)

以前、はてなダイアリーで書いていた「晴耕雨読」の引っ越し先です。今の生活は全くもって「晴耕雨読」ではないので、タイトルは現在思案中。

不思議な街

老街を歩いていると、「Excuse me,」と英語が聞こえた。自分に呼びかけられているとは思わなかったのでそのまま歩いていると「Where are you from?」と聞こえてきたので振り返ると、中年女性(私もだけどね)がこちらを向いて立っている。あ、私に呼びかけていたのね、とわかったので「From Japan.」と答えると「東京から来られた方ですか」と日本語に変わった。
「そうです、日本語お上手ですね」。日本時代に教育を受けた世代ではないと思われたので、素直にそう口にしてみたところ、「ええ、私はパリに留学していたことがあるんです、ソルボンヌに。その時同じ部屋にいた方が日本人だったので、その時に覚えました」。


あまりにも唐突なシチュエーションだったので、一瞬何を言われたのかよくわかりませんでした(笑)。


呉小姐というその彼女は、少し前までは台北にお住まいだったらしい。もともと一族はこの旗山の出身なのだけど、彼女のお父さんは高校は青山学院で東京大学を卒業し、台湾に戻ってきてからは台北に住んでいたと。で、彼女もパリに留学した後、台北に長く暮らしていたのだけど旗山に戻ってきたらしい。老街のお店をやりながら、その上の住居で暮らしているのだという。
「なぜ、ここに来ましたか?こんなに田舎なのに」と言われてしまう。「ここはいいところだと聞いたので」と答えると、ちょっと目を伏せて「この辺だけですよ、古い町なのは」と言われた。おそらく「風情があるのはこの通りくらいですよ」とおっしゃりたかったのでしょう。
「食事はされましたか?もしまだだったら、この先においしいおそばやさんがあるからそこに行ってみてください」とメモに店の名前と「東京から来たお客さんだからよくしてあげてください」というメッセージを書いてくれた。
なんとなくもっと話したそうだったのだけど、私もどう話したものかと迷ってしまったので、そこでお別れした。いつも迷うのだけど、個人的なことを旅行者がどこまでつっこんで話を聞いていいのかと思ってしまうのだ。


さて、呉小姐に紹介されたおそばやさんというのは「宜芳意麺」というお店だった。意麺だけでなくビーフンもできるよ、と言われたけど、意麺を汁なしと汁ありでいただいてみる。
お店のおじさんが急に英語で話しかけてくる。よくよく聞いてみると、「東京電力の仕事で日本に行ったことがある」と言っているのだった。急にTEPCOって言われてよくわからなかったのだけど(笑)。なにやら電線のプロらしい。エージェントが富山にいて、その人に呼ばれて日本中のいろんな電力会社で働いていたそうだ。四国電力にいたときは道後温泉に行ったことがある、とか言われた。
私たちが来たので、それまで見ていたテレビをNHKのBS-1にしてくれた。時間的にちょうど株式市況の時間だったんだけど、おもてなしの心はうれしかった。


で、肝心の意麺は本当においしかった。麺の味も、スープも。中正路の、旧旗山車站の少し手前あたりにあるお店です。おすすめ。意麺1杯40元。
それにしても、旗山、不思議な街です。ソルボンヌ留学帰りの女性や、東京電力で働いていたおじさんが住んでいる街。ただ歩いているだけで、そんな人に出会えてしまう街でした。