晴耕雨読日記(仮)

以前、はてなダイアリーで書いていた「晴耕雨読」の引っ越し先です。今の生活は全くもって「晴耕雨読」ではないので、タイトルは現在思案中。

KOKAMI@network「僕たちの好きだった革命」@東京芸術劇場中ホール

ちょっと前に、本屋さんで高野悦子二十歳の原点」を見かけた。
といっても私が高校生の頃に読んだ新潮文庫版ではなく、新たに復刊されたものだ。復刊ドットコム、頑張ったみたいです。
で、何がびっくりしたって、横書きだったこと。こういう見た目です。

二十歳の原点 [新装版]

二十歳の原点 [新装版]

本人が本当に書いていたものは確かに大学ノートだったわけだから、こういう見た目はありだよね。今の読者のために脚注もあったような。「ような」というのは買ってないからなんだけど。
どこかさがせば、新潮文庫版の「二十歳の原点」シリーズ3冊、あるはずなんだよね。あの、新潮文庫の潔い表紙も好きだった。
私の年代だと学生運動はうっすらと記憶はあっても実経験としては、ない。全学連とか全共闘とかは知識として知っているけど、実際に大学に入ったときにはその匂いはほとんど残ってなかった。近所の大学の構内にそれっぽい立て看板はあったけど、自分の大学になかった(女子大だったし)。でも、大学に行くというと「学生運動なんてするんじゃないよ」なんてことを大人に言われた、ぎりぎり最後の世代か。
そんな世代の自分たちにとって「二十歳の原点」は、ちょっと年上のお姉さんが残してくれた日記帳、みたいな(そのまんまか?)本だった。男子がこの本を読んでどう思ったかはわからないけど、高校時代のクラスメートで高野悦子にものすごく傾倒していて、受けた大学は全部京都の大学で、他の街の四大に行くんだったら京都の短大に行くと言って、実際に京都の短大に進学した子がいる。進学後の2年間、彼女からは京都の学生生活をつづった手紙がよく届いた。それはなんだか、高野悦子のフォロワーというか、「二十歳の原点」の別バージョンを読んでいるみたいだった。もし高野悦子学生運動のない時代に生きていたら、こんな学生生活を送っていたのかも、というような。友人の手紙には、北京語で漢詩を論じる中国文学の非常勤講師にあこがれ、「しあんくれーる」でジャズを聴き、裏路地のバーで飲み明かすという日々がつづられていて、片田舎の大学に通う女子大生にはまるで留学生活を知らせる手紙のようにも思えたものだ。

などということを、見ていてつらつらと思い出した、「僕たちの好きだった革命」。

学園紛争が激しさを増した激動の1969年、高校2年生だった山崎義孝(中村雅俊)は校庭で自分たちの自由な文化祭の開催を高らかに宣言していた。
ところが突然機動隊の催涙弾を受けて意識を失い、長い眠りに落ちてしまった・・・。
30年もの長い年月を経た1999年、彼は目を覚ます。
そして、失われた30年を取り戻すべく、かつて通った高校へ復学することを決意したのだった。
そこで、小野未来(片瀬那奈)や日比野篤志塩谷瞬)、高島希(森田彩華)といった現代を生きる高校生たちと出会う。
彼らは文化祭に憧れのラッパー(GAKU-MC)をゲストに迎えたいと願っていたが、学校側はこれを禁じていた。
「なんとか呼びたい」「自分たちの文化祭を」そんな思いをこらえてしまう学生たち。そして、彼らを見つめる山崎。
やがて・・・。
過去からの使者が現在に何を伝えようとしていたのか。
thirdstage公式サイトより)

ある意味タイムスリップものとも言えるわけだけど、1999年と1969年でもものすごいギャップがあるのに、それからさらに10年経った2009年にこれを見るのもまた若干のギャップがあったりする。
山崎は先輩だった兵藤(大高洋夫)に導かれて学生運動をやっていたのだけど、30年後に目覚めてみるとその兵藤は母校の教頭として生徒を管理する側にいる。拓明高校(というのがこの作品の舞台の学校)全共闘のマドンナだった文香は運動に突き進んでいった結果、心を病んでしまう。
そんな彼らからすると、30年前からやってきた(見た目は老けてるけど)山崎は、自分たちが経験した学生運動の「その後」を知らない、「自主」とか「主体性」という言葉を盲目的に信じている、かつての自分を見ているみたいで嫌悪を覚えたんじゃないだろうか。どうにかして、山崎に運動を辞めさせようと必死になる。
山崎もただノーテンキに運動をしていたわけではなく、自分の限界とか自分と周囲の違和感をわかった上で、でも自分が正しいと思うことをやり続けていた。
「山崎くんはどうしてくじけないのか」という(ような意味の)質問をしたクラスメートの未来(文香の娘)に「未来を信じているから」と答えたり、機動隊が鎮圧に来たときに硫酸を持ち出した未来に「正しく負けなくちゃいけないんだ」と言ったり。彼は「自分が正しいと思うことを大切に、実行する」ということを高校生たちに教えるために、30年ぶりに目覚めたのかもしれないなー、なんていうファンタジーな感想をもってしまった。

それにしても、場内の反応はまちまちで、ちょっとおもしろかった。その時代を知っている人じゃないと笑えないところもあったみたいだし。うちの旦那さんは全共闘世代じゃないけど、小学生時代に家の近くの大学でばりばりに闘争が行われていたらしく、「今日、大学がバリケード封鎖されるらしいから、機動隊に道をふさがれる前におまえは家に帰れ」とかって早退させられたりしていた人なので、私がわからんところでもげらげら笑っていました。
休憩の時に、本当の(っていうのもおかしいが)女子高生が、ロビーで携帯いじっていて、実際の女子高生から見てあの芝居がどう見えるのか、すっごく聞きたかった!……もちろん聞いてはいませんけど(笑)。それにしてもあの女子高生、なんでこの芝居見に来たんだろう……。

ところで、チケット、まだ余裕があるみたいです。ていうか、買ってほしいみたいです。
時間のある方はぜひ。→当日券情報 http://www.thirdstage.com/knet/internetorder.php