晴耕雨読日記(仮)

以前、はてなダイアリーで書いていた「晴耕雨読」の引っ越し先です。今の生活は全くもって「晴耕雨読」ではないので、タイトルは現在思案中。

「トロッコ」のこと。

毎日jpの「銀幕閑話」で、映画「トロッコ」のことが書かれていた。
今週からシネスイッチ銀座で上映とのこと。
……この映画観たよね?いつ?どこで?……記憶をたぐってみるが思い出せない。最近ちゃんと日記も書いてないからよけいにわからない(爆)
で、去年のカレンダーを見ていて思い出した。この映画、台北で観てたんだ。金馬影展で。


映画祭で観たはず、とは思っていたのだけど、日本の映画祭で見たと思い込んでいたのはなぜだろう?と思い返して、ああそうだ、映画の中の言語が日本語だったからだと思い出した。いつも海外の映画祭で映画を観ると、言語の壁に立ちはだかられてしまうのだが、この映画に関してはそういうストレスがなかったんだった。だから日本で観たような記憶にすりかわっていたんだな。どうりでググってみてもわからないはずだ。


どういうお話かは「銀幕閑話」をごらんになっていただくとして、この映画は安直なハッピーエンドではないところがいい。出てくる人たちは全員が何らかの「喪失の痛み」を持っていて、それが台湾の美しい自然の中で癒される、とか、心優しい人たちのおかげで立ち直る、とか、そういう単純なお話でないところが好きだ。もちろん、画面いっぱいに映し出される台湾の風景は本当に美しく、人々はのんびりしていてあたたかいのだけど、それが万能薬のように扱われているわけではない、というところが。ハッピーエンドの面映さのようなものを主人公の少年がよく演じていたなという覚えがある。


体の傷と同じように、心の傷だって完璧に消えうせるということはないんじゃないかな。でも、たとえば傷跡が残っても痛みはなくなる。傷跡を見て、ああ、あんな怪我をしたな、あの時は痛かったなと穏やかに思い返すことができる、その傷跡も自分の一部だと思えるようになることが終着点なのかも。この映画に出てくる人たちはまだそこまで至ってはいないけど、これから時の流れとともにきっとそうなっていく、という希望のようなものを感じられる映画でした。地味だけど、私は好き。


花蓮の夏」のブライアン・チャンも出演しています。