晴耕雨読日記(仮)

以前、はてなダイアリーで書いていた「晴耕雨読」の引っ越し先です。今の生活は全くもって「晴耕雨読」ではないので、タイトルは現在思案中。

「紅日風暴」@2:00pm, 香港科学館

Sさんと別れ、私はまたスターフェリーに乗って九龍側に戻り、香港科学館へ。ここで14時から「紅日風暴」を。小川紳介の薫陶を受けて「満山紅柿」を撮った彭小蓮監督による2時間あまりのドキュメンタリー映画
上映の後、ティーチイン(というか、「討論会」とあった)が予定されているせいか、席の8割は埋まっている。映画祭のホームページにあるあらすじでははっきりと内容はわからなかったけど、紹介されているシーンからある程度政治的な内容を含んでいるだろう、ということはわかった。


映画は魯迅の葬送の画像から始まる。
この映画の題材は、胡風という人物とその周辺にいた人々の物語だ。胡風は反党分子として毛沢東から(共産党からというよりも、そういう描き方だった)徹底的に批判され、彼とその周辺の人々(胡風集団と呼ばれた)は長い間苦難の人生を強いられた。彭小蓮の父、彭柏山はその胡風集団の一人としてやはり長い間投獄されていた。この映画はそういう出自を持つ映画監督による、当時いったい何があったのかを検証する映画である。


この映画を、香港で上映していいのだろうか?と観ているうちに思ってきた。一応ここって中国国内なんだし。
途中で、毛沢東の死が知らされるシーンで、観客から拍手が起こったのには少し驚いた。……いいの?大丈夫?そして終わった後も大拍手。関係ない日本人の方がひやひやしちゃいました。


それにしても、昔の中国の知識人って、ちょっとシニカルでおもしろい。
賈植芳という、昨年亡くなった評論家のおじいさん曰く、「英米への留学生と日本に行った留学生は全然違うんだよ。英米留学生は紳士、Gentlemanを生んだが、日本留学生は左派分子を生んだ」。その言いっぷりがなんだかおちゃめで笑ってしまった。
彭小蓮はこの「胡風集団」の人々にとっては、自分の姪のように思われていたらしい。誰に話を聞いてもみんなそんな風に扱ってくれた、と本人がナレーションで言っていた。胡風集団の人々は映画監督になった彼女に、自分たちのことを後世に残してもらいたいという願いを持っていた。が、以前の彼女には荷が重かった。その後、ドキュメンタリー映画の手法を身につけて、機は熟したと思ったのか5年前から制作に入ったようです。


毛沢東の俗人っぷりもおかしかったなあ。当時のニュース映像とかを流用しているだけなのに、そういう風に受け取ってしまうのは、私の心が曲がっているんでしょうかね。


主に当時の映像や関係者のインタビューで構成されているが、題材が題材なので、言語による情報が多い。当時の新聞記事や、インタビューも普通にしゃべっているのを字幕でぱっぱっと見せられると、語学力の乏しい者にはつらい。
だからぜひ、今年の山形でやってくれないでしょうか。というか、日本で上映するなら山形国際ドキュメンタリー映画祭しかありえません。