劇団、本谷有希子。「遍路」@紀伊国屋シアター
本谷有希子の芝居は、いつも私の神経の何かにさわる。おもしろいんだけど、触れてほしくないところに触れて、ちょっといらいらする感じ。
東京で女優になるという夢に破れて田舎に戻ってくることに激しく抵抗する娘の話で、またその娘が家を出るきっかけというのが、かんしゃく持ちの父親の奇行による、みたいな、奇妙な設定のようで、でも別に珍しくもないような設定。
家族の反対を押し切って、自分の夢のために東京に出てくるというのが、すでに胸が痛い。経験者だから。私もその夢からは途中でドロップアウトしてしまったけど、実家に戻るという選択肢はできるだけ最後にしようとあがいて、まあ幸運なことになんとかなったわけですが、途中何度も「もうだめかも。家に戻るしかないかも」と思うことがあって、絶望的な気持ちになったりもした。
そういう経験のある人にはちょっと痛い芝居かなあ。いや、本谷有希子が描きたかったのはそういうことじゃないと思うんだけど。ただ、やりきれなさはなく、脳天気はハッピーエンドではないけど、遠くに希望の光があるのが見えた、気がする。